「ウォー・イズ・トラウマ」開催にあたって――アーロン・ヒューズのメッセージ

 以下は、イラク戦争開始から9年目にあたる2012年3月19日に、IVAW のアーロン・ヒューズが「ウォー・イズ・トラウマ」の開催にあたって寄せたメッセージである。

「ウォー・イズ・トラウマ」開催にあたって――アーロン・ヒューズのメッセージ
 アメリカがイラクで戦争を始めた2003年3月19日から9年目の今日、IVAW とJustseeds が、目に見えない戦争のトラウマに光を当てる「ウォー・イズ・トラウマ」を公開できたことを誇りに思う。ぜひ「ウォー・イズ・トラウマ」の新しいウェブページを訪れて、隠されがちであるイラクの人々や帰還兵、私たちの社会、そして地球上の心の傷に光を当てるために、これらの作品をダウンロードして印刷してほしい。
 結局、イラク戦争はアメリカ国民に4兆円以上を費やさせることになりそうだ。しかし、金銭的コストは人的コストに比べたら微々たるものである。イラク戦争は4,485人のアメリカ兵と113,000人以上のイラク市民の命を奪った。それを上回るほど多くのイラク人と退役軍人が戦争を生き延びたが、私は心と体に傷を負って生きている。
 現役・退役軍人のあいだで増加する自殺(2010年に米軍の全部門で自殺により死亡した現役軍人は少なくとも468人)のなかでも、このポートフォリオは、とりわけ彼らの、戦争による目に見えない犠牲を強調している。度重なる派遣のために、軍隊におけるトラウマの危険性は増え続けている。このポートフォリオで強調されているいくつかの統計を挙げてみよう。

  • 2001年から2005年にかけて、米軍における自殺率は150%増加した。
  • イラク又はアフガニスタンに配置された全現役兵のうち20%~50%はPTSDに苦しんでいる。
  • イラク又はアフガニスタンに派兵された1/3の兵士が、必要な時にメンタルヘルスの専門家に診てもらえない。
  • 現役兵の20%近くが、何らかの精神治療薬を服用している。
  • アフガニスタンの路上で爆撃され負傷した米軍部隊の数は、2009年~2010年で178%増加した。
  • 3人に1人の女性が軍隊にいるあいだにレイプされ、報告されたレイプのうち48%は男性サバイバーによるものである。

 米軍はイラクから撤退したが、軍隊の民営化によって戦争は続いている。戦争請負会社はイラクを占領し続け、アメリカはイラクにある基地を維持している。イランを攻撃せよという声が高まっている。アメリカでは、軍事主義の文化が衰えないままであり、軍事基地周辺の多くのコミュニティーは、軍産複合体へ経済的に依存したままである。
 要するに、我々は絶え間ない戦争状態を生きており、アメリカは無意味な軍事費に税金の50%以上をつぎこんでいるのだ。この状況下では、暴力・国家権力・企業支配が増大する一方で、教育・福祉・公共サービス・環境が損害を被る。
 「ウォー・イズ・トラウマ」のポートフォリオが公開されたのは、このような状況において、現役・退役軍人の人権を求める活動を支え、今まさに起きている戦争と占領を終わらせるための差し迫った要求だ。Justseeds とIVAW は、「回復作戦」キャンペーンを支えるクリエイティブな活動をともに始められたことを誇りに思う。
 ポートフォリオ自体は34のプリントから構成されており、Justseeds とIVAW のほか、我々が敬服するアーティスト(及びアーティスト集団)の作品からなる。
 ポートフォリオの作品は、関連テーマ全般を扱っており、トラウマを負った兵士の再配置の廃止、兵士の治療の権利、過去及び現在の兵士の抵抗への支持、アメリカにおける軍事主義文化への挑戦、海外での戦争の終結を主張している。

原文:
 Hughes, Aaron, 2012, “WAR IS TRAUMA: PORTFOLIO RELEASE,” IRAQ VETERANS AGAINST THE WAR, published on 19 March 2012, available at http://www.ivaw.org/blog/war-trauma-portfolio-release.
翻訳:翻訳:中村江里 | 2012年6月23日