スピーキングツアーのイベントをつくる
~Aaron & Ash Speaking Tour 2012 来日前イベント、プレ・パネル展をふりかえって~
はじめに:この記事について
この記事は、2012年のアーロン・アッシュ スピーキングツアーの前に行った「プレ・パネル展(以下パネル展)」を振り返って、サポーターの一人として参加していた、まつむら(Travelling Warriors会員)が書いています。
パネル展とは、2012年11・12月のツアーに向けて、その準備・宣伝のために、半年ほど前から、アーロンさんとアッシュさんの作品のなかでも絵画のような形態で展示できるものをパネルにして、いろんなところで展示会を開いていこう、という企画でした(当初は、ツアーの時にオリジナルの作品を持ってきてもらうつもりだったため、まずは先に「コピーのようなもの」で作品を紹介しようと始まった企画です)。
2012年6月~11月のあいだに関西と関東でパネルを共有して行いましたが、ここで扱うのは、そのうちの関東での展示会です。
いまパネル展のことを、スピーキングツアーの「準備・宣伝」、そしてパネルを「コピーのようなもの」と書きました。が、じっさいには、このパネル展にも、(オリジナルの作品ではない)パネル自体にも、大事な、そして独自の意味があっただろうと思います(または、独自の意味がどんどん生まれていくものだったというほうが近いかもしれません)。
そのように思う理由は、記事のなかでも書いていきますが、たとえばパネル展の会場やパネル化する作品などを自分たちで選んだということがあります。また、会場探しのときも、パネル展の場でも、「なぜイラク戦争の帰還兵のアート作品のパネル展を行うのか」ということを自分たちの活動として、自分たちの言葉で説明しなくてはいけなかったということもありました。
それらはとても難しく、迷うことやうまくいかないことも多かったように思います。でも、そういう部分も含めて、ツアー前のパネル展は、「アーロンさんやアッシュさんの作品をパネルで紹介し、ツアーを準備・宣伝する」ものというよりも、「帰還兵」ではない(=当事者ではない)人たちが、かれらの活動に自分の活動として関わっていくひとつの方法、過程だったといえるのではないかと思います。
私たちがひとりひとり、帰還兵のツアーに「参加」していく方法と過程。それは、当サイトでは、「Speaking Tour」のページ、「Travelling Warriors スピーキングツアー」の「イメージ図」と説明書きにイメージが載せてあります。だいたい、「みなさんひとりひとりが主催者として色んなイベント企画をつくる&Travelling Warriors が主催者とスピーカーとのあいだをつなぐ」というものです。
この記事は、私がそういうふうに主催者の一人として関わった2012年のパネル展、なかでも関東での展示を振り返るものです(関東のパネル展づくりに参加したメンバーは他にもいますが、この記事はみんなを代表するものでも全体をまとめるものでもありません)。2017年のスピーキングツアーに参加してみようと思われる方にとって、一例としてお読みいただけるとうれしいです。
*写真やチラシ、小冊子などは、とくに記載がなければ2012年のものです。文章は2016年3月現在のものです。チラシなどに載せられていたメールアドレスやお顔写真その他、個人情報・著作物的なものは消してあります。パネル展を観てくださった方々の「感想」もご紹介しますが、こちらで編集させていただいたものです。
パネル展の日程・場所・タイトルなど。
パネル展の開催日程です。☆のついているパネル展は、のちほど内容をご紹介します。
- 4月~5月
パネル展の打ち合わせ。パネル、チラシ等の作成。展示会場探し。 - 6月25日(月)~7月13日(金)
☆パネル展 in 関東「ある帰還兵の心象風景」@一橋大学 図書“環”オープンスペース「えん」 - 6月26日(火)~7月1日(日)
Aaron & Ash Speaking Tour 2012 来日前イベント in 京都 @京都 ひと・まち交流館
パネル展「その光景と思索~イラク帰還米兵作品パネル展~」
映画上映会『立ちあがるイラク帰還兵』 &木村修監督トークイベント(29・30日) - 7月18日(水)~8月1日(水)
☆パネル展 in 関東「ある帰還兵の心象風景」@café gallery uzna omom(ウズナオムオム) - 8月4日(土)~25日(土)
☆パネル展 in 関東「その光景と思索~イラク帰還米兵作品パネル展~」@原爆の図 丸木美術館 - 8月29日(水)~9月12日(水)
パネル展 in 関東「ある帰還兵の心象風景」@space & cafe まんまるの木 - 11月2日(金)~4日(日)
☆Aaron & Ash Speaking Tour 2012 来日前イベント in 一橋大学一橋祭(いっきょうさい)
パネル展 in 関東「イラク帰還米兵 作品パネル展」| 映画上映会『IVAW(反戦イラク帰還兵の会) 明日へのあゆみ』(2012)&木村修監督トークイベント(3日) - 11月 ツアーはじまる。
パネル展の準備いろいろ。
パネル展の企画と準備は、だいたい2012年の4月ごろから始めました。主な作業は、パネル展をすることの決定、サポートメンバー集め、パネル化して展示する作品選び、パネル作り、会場探し、チラシや冊子作りなどです。
●パネル展企画の決定とパネル作り
パネル展の企画自体は、関西で行うことが決まっていたため、関東でもそれをやろう、というふうに決まったように思います。アーロンさん・アッシュさんの作品の一覧を見ながら、どれをパネルにするのか、パネルの大きさはどれくらいにするのか、打ち合わせをしました。パネルは、作品をデジタル・データで送ってもらい、日本で縮小印刷して作成しました(関西で作成)。
●サポートメンバー集め
サポートメンバー集めは、まずは身近な人で、軍隊や戦争のことに関心がある人に声をかける、というシンプルなものでした。初めは、パネル展がどういうものになるのかもはっきりしていませんでしたから、だいたいのことを説明して「一緒に作っていこう」と誘う、という感じでした。ひとつひとつのパネル展の搬入・搬出やその他の作業などは、サポーターのあいだのMLで告知して、当日予定の合う人が集合するときもありました。
●会場探し・希望いろいろ
そうしてパネル展がどういうものかが分かっていったのは、会場探しと並行して、少しずつだったように思います。会場を探すにあたって、私たちは<パネル展ですること>(以下の1. ~7.)をまとめ、それに合わせて会場を探していきました。しかし、会場の性格によってあきらめた項目があったり、貸主さんと話し合うなかで変更した項目があったりしたからです。以下の箇条書き1. ~7. があらかじめ決めてあった<パネル展ですること>、→ の後ろが、じっさいにどうなったか、他に・代わりに何をしたか、などの例です。
- パネルを展示する。
→ 会場の都合でぜんぶが無理ならば数点選ぶ。貸主さんに選んでもらうことも。
- 戦争や帰還兵に関する本*を展示する。
→ パネルと同様に展示。会場に本棚などがあれば一緒に置かせてもらう。
本は、販売目的ではなく閲覧用です。イラク戦争のこと、アメリカ軍の帰還兵のこと、兵士以外の戦場の労働者のこと、自衛隊のなかの自殺や鬱のこと、原爆や原発や核兵器の「ヒバク」のことなど、さまざまなテーマのものを置きました。 - パネルについての「感想ノート」を置く。
- パネル展やツアーについてのチラシ、冊子を置く。
→ チラシや冊子は会場ごとに作成して置かせてもらう。会場のチラシやwebサイトに紹介してもらう。チラシの様式が決まっていたら、それにしたがったものも作成する。
- ツアーのためのカンパを募る箱を置く。
→ お金のやり取りはだめなところもあり。
- ツアーの資金集めのために、ポストカードを販売させてもらう。
→ お金のやり取りはだめなところもあり。会場ですでにアーティストの作品などを販売されている場合、そこに一緒に置かせてもらう。
- サポーターが会場に常駐して、パネルを観てくださった方々に話しかけ、ツアーのことやパネルについて説明したり、その方々の感想をお聴きしたり、いろいろ話し合えるようにする。
→ 展示以外の、サポーターが常駐するスペースのみ有料のところもあり。サポーターが常駐できない場所もあり。
最後の7. を考慮すると、パネル展の会場は、公民館のようなところ、市など自治体が持っているスペースをお借りするのが適当・可能な方法のように思えました。しかし、じっさいは、サポーターの常駐ができないところも使わせていただきましたし、展示期間中の何日かのみサポーターがいた、という場合もありました。
サポーターが常駐できないところでの展示の是非については、サポーターのあいだでも意見が分かれました。たとえばカフェなどの場合、お客さんにはもともとアート作品に関心をもっていない人もいます(アートに関心があっても、戦争や軍隊というテーマは敬遠する人もいるかもしれません)。作品を観てもらえた場合でも、そしてたとえば「雰囲気に合う・合わない」「好き・嫌い」という感想を持ってもらえたとしても、それより深い関心はもってもらえないのではないか、ツアーのことも知ってもらえないのではないか、といった心配もあったように思います。
しかし、もちろんいろんな可能性への期待もありました。パネルを偶然目にしてツアーに関心を持つ人がいるかもしれない、ツアーに行こうとまでは思わないとしても、イラク戦争や帰還兵のことや帰還兵とアートのことを心にとめていく人がいるかもしれない、といった期待です。
●会場探し・手順
会場探しは、インターネットで、アート作品の展示のために無料(もしくは安く)でスペースを貸してくださるギャラリーやカフェ、コミュニティ・スペース、公民館や駅の通路、街の掲示板などを探し、いくつか候補を絞ったら、メールや電話でお願いをして、それから直接うかがい、交渉していきました。場所は、サポートメンバーが通いやすいところ、を優先したように思います。
交渉は、
- 作品のプリントアウト版を持参し、どういう作品なのかをお見せする。
- 展示スペースをみせていただき、搬入・搬出の日や方法、枚数や展示方法(貼り付け・吊るすなどの展示の方法や、照明の配置など)、だいたいの配置などを話し合う。
- 書籍やカンパ箱、ポストカード販売、チラシの設置などについて話し合う。
- サポーターが常駐できるかどうか、そのときの条件や料金などを話し合う。
という感じです。
このとき、「イラク戦争の帰還兵によるアート作品」を説明することも、それらの作品を私が日本で展示したい理由や意図などを説明することも、とても複雑で難しいものでした。難しいということがどんどんわかっていったということかもしれません。
他方、無料または廉価でアーティストの作品展示にスペースを貸し出される貸主さんは、作品をどう評価するか、場所柄やお客さんの傾向に合うか、ご自分の好みに合うか等々、それぞれ貸し出し基準をお持ちです。
また、たとえば環境問題に関心がある・政治問題は扱わない・町づくりの一環として・新人アーティストに発表場所を提供するなど、スペースを貸し出されるコンセプトやポリシー、目的などもいろいろお持ちです。
ですから貸主さんも、このパネル展のときには、そういう貸出基準やポリシーなどに照らし合わせつつ、「帰還兵のアート作品」を展示することについて、いろいろ考えてくださったのではないかと思います。
●お金のこと・その他
パネル展でいうと、パネルやポストカード、チラシやパンフの制作と印刷、会場使用(一部は有料)、展示作業(文具など)、運搬(関西・関東間でのパネルの郵送)などなど、地味にお金がかかります。主な費用は、ツアー全体の経費からいただきましたが、できることはなるべく手作業・手作りでした(非常に地味なことを書きますと、たとえば自宅でチラシを作ってプリントアウトする場合、すでにあるものはカンパとして使う、特殊な紙など新たに購入するものは経費にする場合もあり、とか)。
打ち合わせのときやパネル展会場への交通費は、それぞれ参加者個人によるツアーへのカンパということになったと思います(打ち合わせや打ち上げのときにときどきかかる飲食代というのもあります。
もちろん経費ではありませんし、ふつうカンパとはみなされないものです。が、一緒にご飯を食べることがメンバー同士の交流や対話の場として役立つときもあって、見えない経費またはカンパといえるものではないかと個人的には思います)。
パネル展ひとつひとつ。
パネル展をひとつひとつ、でも内容的には少しだけ、ご紹介します。パネル展のタイトルや紹介文、チラシなどは、会場ごとに作りました。そのチラシや、展示の様子(写真)も一部ご紹介します。会場の住所などは、2016年3月現在もweb公開されているものです。
●「えん」
Aaron & Ash Speaking Tour 2012プレ・パネル展 in 関東「ある帰還兵の心象風景」
日時:6月25日(月)~7月13日(金)10:30~18:00 (土日休)
場所:一橋大学図書“還”オープンスペース『えん』(東京都国立市中2-1)
ウェブサイト:http://ennoshita.kakuren-bo.com/
最初のパネル展は、国立市にある一橋大学のキャンパス内、付属図書館の横にある「えん」というスペースで行いました。ここは、学生サークルである「チーム・えんのした」さんが「古本リユース空間」として運営されているところで、いつも学生さんがゆったり本を読まれている印象がありました。パネルの数はわりと多く展示できたように思います。
感想ノートより観てくださった方の感想(編集してあります・これ以降も同じです):
「リアルなテーマだけど、ファンタジック」(アッシュさんの作品に)
「決して軽いテーマではないが、空間と作品がマッチしていて素敵」
「多彩だけど、統一感がある」(アーロンさんの作品に)
「アートというかたちで経験を表現するところに、前向きな姿勢を感じる」などなど。
●「uzna omom(ウズナオムオム)」
Aaron & Ash Speaking Tour 2012プレ・パネル展示企画 in 関東「ある帰還兵の心象風景」
日時:7月18日(水)~8月1日(水)12:00~20:00(火休)
場所:cafe gallery uzna omom (東京都渋谷区神宮前5-17-8原宿XS203号)
ウェブサイト:http://www.uznaomom.com/
カフェ・ギャラリー ウズナオムオムさんは、表参道を原宿寄りに一本入る、キャットストリートという遊歩道にあります。店内の大きな白い壁をアート作品の展示用に貸し出されていました。こちらでは多くのパネルは展示できないということで、アーロンさん8枚、アッシュさん3枚のパネルを、「戦争のことが少しでも伝わるように、でも、暗く希望の無いかたちでは終わらないように」と店長さんが選ばれました。関連書籍は、お店の本棚に、美術関連の書籍がならぶあいだに「さりげなく」紛れ込みました。お店のお客さんはいろんな年齢層の人がいらした印象です。ここでの写真をみたアッシュさんが、「シブヤに自分の作品が飾られた!」と喜んでくれたのでした。
感想ノートより:
「胸に迫る訴求力がある」
「戦争から還ってきて、どうして絵を描くようになったのか聞いてみたい」などなど。
ウズナオムオムさんでの、DM用ハガキ(表・裏)。(地図画像は店長さん提供)。
●原爆の図丸木美術館
Aaron & Ash Speaking Tour 2012プレ・パネル展 in 関東 「その光景と思索~イラク帰還米兵作品パネル展~」
日時:8月4日(土)~25日(土)9:00~17:00(20日休)
場所:原爆の図 丸木美術館 2Fアートスペース(埼玉県東松山市下唐子1401)
ウェブサイト:http://www.aya.or.jp/~marukimsn/index.htm
原爆の図 丸木美術館さんは、埼玉県のほぼ中央に位置する東松山市にあります。画家丸木位里・丸木俊夫妻が1966年に同市に移住し、翌年開館した美術館だそうです。美術館のすぐ隣には、夫妻の晩年のアトリエだったという古民家や、来館者が参加するワークショップの作業場などがありました。お庭からは、都幾(とき)川の流れがのんびり見渡せました。お借りしたスペースは、有名な『原爆の図』の展示室のお隣の広いお部屋でした。とくに8月15日は来館者が多く、夏休みの課題として親子連れで来られた方も多かったのでした。そういう方々がパネル展にも立ち寄って下さいました。『原爆の図』を観に行ったら、イラク戦争に参加したアメリカ軍の帰還兵の作品にも出会う。そんな場をつくらせていただけた、ということだったのかもしれません。そういえば『原爆の図』には、丸木位里があとになって、原爆の被害を受けた人々を描いた部分に(被爆した)アメリカ人の姿も描き足したというお話をお聴きしました。
感想ノートより:
「日本ではイラク戦争はメディアのなかの出来事のようだが、経験した人は伝えたいと思って描くのでは」
「自分と向き合い、表現してくれたことに敬意を表したい」などなど。
●「まんまるの木」
Aaron & Ash Speaking Tour 2012プレ・パネル展 in 関東「ある帰還兵の心象風景」
日時:8月29日(水)~9月12日(水)8:45~17:00(日月祝休)
場所:space & cafe まんまるの木(東京都世田谷区池尻2-37-15)
ウェブサイト:http://manmarunoki.com/index.html
スペース&カフェまんまるの木さんには、1階にも2階にもさまざまなアート作品が飾られ、本棚には文化史・郷土史等の本がたくさん並んでいました。私たちがお借りしたのは2階です。パネルも多く展示でき、本は、本棚の中でなく、展示の棚に並べました。お客さんには、環境問題や地域の歴史、平和運動などにご関心の高い方が多い印象で、パネルも本も熱心に観ていただきました。また、私たちのほうもいろんなお話をうかがう機会に恵まれました。
ある日、カフェにいらしたアーティストの方に、(まんまるの木周辺の町である)池尻・三宿の郷土史を、地元の方への聴き取りからつづった小冊子をいただきました(せたがや道楽会発行『『世田ヶ谷』見聞録――池尻・三宿からの昔話』(2009年))。それによると、池尻と三宿は、農村の多い世田谷区のなかで、もっとも初めに開けた都会だったそうです。そのきっかけのひとつが、1891(明治24)年に、赤坂から軍隊(旧日本帝国軍)が移ってきたことです。練兵場や兵舎が造られ、各地から人が集まり、町にも軍相手の商店が増えていったそうです。そうやって町の人々の暮らしが軍隊と兵士たちの暮らしとともにあったこと、だから/しかし、戦争の終わりごろには、アメリカ軍による空襲を受けたときの「延焼」を防ぐために(日本)軍によって町の一部があらかじめ壊されたこと、そして空襲でもさらに壊されたことを知りました。
感想ノートより:
「相互理解をすすめれば、戦争は回避できると思う」
「戦争は愚かなことだと、分かるときが来ると思う」
「まんまるの木」さんが発行されているペーパー「牛女だより」の一頁。
●一橋祭(一橋大学の大学祭)
Aaron & Ash Speaking Tour 2012 来日前イベント in 一橋大学一橋祭
プレ・パネル展 in 関東「イラク帰還米兵 作品パネル展」
日時:11月2日~4日 10:00~17:00(4日~15:30)
場所:一橋大学(本館35教室)
映画上映会『IVAW(反戦イラク帰還兵の会) 明日へのあゆみ』(2012)
日時:2日14:00~/3日14:00~/4日12:00~
木村修監督トーク・感想交流会(3日15:15~)
一橋大学の大学祭、一橋祭に院生有志として参加し、パネル展と映画上映会、トークイベントを行いました。アーロンさんとアッシュさんの作品のパネルに加え、イラク戦争やIVAW、帰還兵などの基本的な情報についての説明もつくって展示しました。会場は、ふだんは教室として使用されている場所ですから、関東エリアの展示会場のなかでは、いちばんアートと縁遠い、飾りのない場所でした。そのためパネルをきれいにみせる(せめてちょっと整える)工夫が必要でした。いろんなところを移動してきたパネルはだいぶよれよれだった、というのもあります。しかしこの会場では、アート作品や映像作品は、(たとえば文字だけの展示よりも)関心を持ってもらいやすいということを改めて思いました。また、観ることを入り口にして、作品の背景や意味についての説明を読むこと(戦争や軍隊について考えること)へと進んでもらえる、という実感もできた場所でした。来てくださったのは学生さんと、主に国立在住のさまざまな年齢層の方々で、ゆっくりお話させていただきました。また、『IVAW(反戦イラク帰還兵の会) 明日へのあゆみ』を上映し、監督である木村修さんをお招きしてトークイベントを開きました。
感想ノート、アンケートより:
「大きなメディアによって自分のなかでのイラク戦争イメージが作られてしまっていたことを見透かされるように感じた」(アッシュさんの作品に)
「絵は、多くのことを伝えられると思った」
「どのような思いで描いたのかと思うと胸が痛む」
「戦争が、人々にも環境にとっても、醜く悲惨なものであることを思った」(アーロンさんの作品に)
「みんなが忘れて、風化してしまうことをとりあげていて、思い直す機会になった」
「現実離れしているように思えるが、それだけ戦争が遠い場にあるということだと思う」
「戦争の残虐さなどが伝わってくる」
「これからも元兵士として、戦争をしてはいけないということ、平和の大切さを伝えていってほしい」
パネル展のひとつのまとめ
2012年のスピーキングツアーは、アーロンさんとアッシュさんが那覇に到着した11月15日から始まり、12月9日の丸木美術館で終了しました。そのあいだに、お二人には、関西・関東でのパネル展についてお知らせしました。各会場でとった写真や、各会場で来場者の方々からいただいた感想を翻訳してお渡ししたり、それについて話し合ったり、などです。
しかし、そういえば、11月からのスピーキングツアーに、その前のパネル展を見たから来たという人がいたのかどうか、きちんと調査・確認はしなかった気がします。
先に、「会場探し・希望いろいろ」のところで、パネル展を観てくれた人のなかに、ツアーに行こうとは思わなくても、帰還兵とそのアート作品のことを心にとめていく人がいてくれればそれでもいいと思う、と書きましたように、パネル展の意味は、スピーキングツアー来場につながることだけではなかったと、いまは思います。が、とりあえずツアーのときにアンケートなどでお聞きすることもできたんだな、と少し(3年越しに)反省しています。
これからのこと(この記事のまとめの代わりに)
というわけで。とても手探りで手作りの企画は、出会いも含めていろんな生まれたものがあって、会としては2012年に終わりましたが、2017年のツアーに続いていく人のつながりや知恵や思いもあります。どこかで続いている何かもあるかもしれません。
2017年の企画とご参加をお待ちしています。